
送りバントは「意味ない」「時代遅れ」というのは本当なのだろうか?
この記事を読んでいるあなたは、送りバントに対して上記のような疑問を抱いているのではないでしょうか。
確かに、「送りバント」という言葉を検索すると「意味ない」「時代遅れ」といったワードが出現します。
では、送りバントに意味がないというのは本当なのでしょうか?
そもそも、なぜ意味がないと言われるようになったのでしょうか?
この記事では、送りバントが有効な作戦なのかどうかを、現代の高校野球の実状をふまえて解説します。
後半では送りバントにおける打率の影響や、速いボールに対して送りバントを成功させるポイントを説明します。
ぜひ、最後まで読み進めてください。
目次
送りバントは本当に意味ないのか?
結論からお伝えしますと、私は送りバントに意味があると考えています。
(今回は、高校野球をもとに話を進めます)
最大の理由は、2024年春から導入された低反発バットの影響です。
2024年の甲子園大会では、春夏ともにホームラン数が激減しました。
- 春:2022年(18本)→2023年(12本)→2024年(3本)
- 夏:2022年(28本)→2023年(23本)→2024年(7本)
いずれも、金属バットが導入された1974年(春は1975年)以降の歴代最小記録です。
このように、ホームランが期待できない中で得点を重ねるには、ランナーを手堅く進めるのが有効と言えます。
実際、2024年夏に甲子園で旋風を巻き起こした大社高校は、バントをしっかり決めたことで早稲田実業に勝利しました。
バントを決めたのは代打で出場した選手です。
11回裏の攻撃前に、監督から「バントを決める自信があれば手を挙げて」と言われて出場を志願し、見事に決めました。
今後も、送りバントを成功させられるかどうかで勝敗を左右するケースが増えてくるでしょう。
そもそも送りバントとは?
ここで、そもそも送りバントとは何なのかを整理しておきましょう。
送りバントとは、ランナーを進めることを目的に行うバントです。
「犠牲バント」「犠打」とも呼ばれます。
具体的には、以下の状況で行われるバントのことです。
- アウトカウント:ノーアウトあるいは1アウト
- ランナー:1塁のみ、2塁のみ、1塁と2塁にいる
ランナーが3塁にいる場合は、スクイズと呼ばれます。
「意味ない」「時代遅れ」と言われる理由
送りバントが「意味ない」「時代遅れ」と言われる理由として有力なのが、以下のデータです。
野球の世界には、データを統計学的見地から評価し戦略を考える分析手法としてセイバー・メトリクスというものがあります。その研究によると、高校野球の場合は送りバントで1死を与えることで、得点期待値が0.90から0.77へ減少することがわかっています。(科学的に見て「送りバント」は有効な戦術なのか〈2021年4月11日の記事〉より)
とはいえ、気をつけるべき点が1つあります。
それは、このデータが2021年時点のものである点です。
確かに、2020年以前は甲子園でホームランをよく見かけました。
2017年~2019年における夏の甲子園大会のホームラン数を見てみましょう。
- 2017年:春23本・夏68本
- 2018年:春20本・夏51本
- 2019年:春19本・夏48本
最も少ない2019年が最も少ないですが、2024年と比べると春・夏ともに6倍を超える本数です。
以上の結果をふまえると、次のように考えられます。
- 甲子園でホームランが多かった2019年までは、送りバントは「意味ない」という意見に説得力があった
- 一方、低反発バットが導入された2024年以降は、必ずしも「意味ない」と言えない
時代によって考え方が異なります。
送りバントの打率の影響
送りバントが成功した場合は、打数としてカウントされないため打率への影響はありません。
しかし、失敗した場合は、打数としてカウントされるため打率が下がってしまいます。
ここでの「失敗」とは、以下のような状況です。
- スリーバントを試みたがファールになった
- バントしてフェアグラウンドに転がったが、前のランナーがアウトになった
- バントしたもののフライが上がり、捕球された
ちなみに、送りバントをしたものの結果的にセーフティバントの形になった場合は、ヒットとなり打率が上がります。
速球でも送りバントを成功させるポイント(体験談あり)
速球でも確実に送りバントを決めるためのポイントは、以下の3つです。
- 右バッターの場合、右手でバットの中央部を持つ時は5本の指で握る
- 上半身をピッチャーの方に向ける
- ひざを使ってボールの高さに合わせる
1で説明したバットの握りは、以下の画像を見てみましょう。
2で説明した「上半身をピッチャーの方に向けた」場合の足の位置は、以下の通りです。
バットをしっかり握って上半身を投手の方に向ければ、体の力が伝わりボールの勢いを弱められます。
ひざを上下させてボールを当てるのも大事なポイントです。
ここからは、私の中学1年生の頃のエピソードを紹介します。
試合は0-0で迎えた4回裏。
ノーアウトランナー1塁という状況で、私に打席が回ってきました。
バントのサインが出る典型的なケースです。
サインを確認すると、案の定バントでした。
相手投手のスピードボールを確実にバントするために、最初からバントの構えをしました。
初球と2球目はボール。
3球目をバントしたものの、球威に押されてしまいファール。
監督に怒られてしまいました。
その時、ふだんの練習で意識していることを思い出しました。
(もう1度、確認のためにお伝えします)
- 右バッターの場合は5本指でバットを握る
- 上半身を正面に向ける
- ひざを使ってボールに合わせる
この3つのことをふまえて次のボールをバントを実行した結果、ボールは1塁方向に転がり成功しました。
練習で取り組んでいることを試合で活用できると、うれしくなります。
現在、プレイヤーとして活躍している方は、しっかり送りバントを練習して試合で成功させてください。
まとめ~送りバントのことを様々な視点で捉えてみよう~
今回は、送りバントは意味ないのかといったことや、試合で送りバントを成功させるためのポイントをお伝えしました。
大事なポイントを、以下にまとめておきます。
- 2021年のデータをふまえると、送りバントは意味ないと考えることもできる
- とはいえ、低反発バットの導入や甲子園の結果をふまえると、送りバントは有効と言える
- 打率に関しては、成功の場合は影響がなく失敗の場合は影響がある
- 試合で送りバントを決めるには、構えとバットの持ち方が重要である
今回の記事執筆を通して、送りバントについて様々な角度から考えることができました。
送りバントに限らず、色々な視点で野球を捉えると理解が深まります。
その結果、野球に対する興味がわいてきます。
この記事をきっかけに、バント・エンドラン・盗塁など、野球の作戦のことを考えてみるきっかけになれば幸いです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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